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孤独のとなり


良書紹介#8 執筆担当:塚本寿子(関東地区担当主事)



【三浦綾子著、『孤独のとなり』角川書店、1983年】



三浦綾子さんといえば、塩狩峠や氷点などの有名な作品を数多く残された著名なクリスチャン作家の一人です。皆さんもきっと、一度は聞いたことや作品を手にとったことがあるのではないでしょうか。あるいは、教会の本棚で目にしたという方も多くいらっしゃるかもしれません。


私は定期的に綾子さんの作品を読むのですが、中でもお勧めしたい作品が「孤独のとなり」です。本書は、三浦綾子さんが新聞や雑誌などに掲載した文章をまとめたエッセー集です。目次を開くと、なんと66にも及ぶコラムの数々がおさめられています。


愛とはなにか、生きるとはなにか、そういう根源的なテーマを、恋愛や夫婦関係、綾子さんに悩みを寄せた人々の姿から、また食べることや住まうこと、病気、ある時は動物や虫を通してなど、私たちに馴染みの深い、何気ない日常を切り口とし、深い洞察をもって読み手に迫り、問い、語りかけ、教えてくれる、そんな作品です。綾子さんの歯に衣着せぬ、けれども一貫して愛の眼差しをもって語られる言葉の一つ一つは、まるで親しい先輩からお話を伺っているような心持ちになります。


しかし、ここでいう綾子さんの愛の眼差しとは、消してふわっとしたものではありません。「孤独のとなり」というタイトルにある通り、表情は違えど、本書の根底には様々な悩みや苦しみ、痛み、怒り、葛藤といったずしりと重く暗い川が流れており、読み手にとっても、心の奥にある開けたくない扉に手がかけられるような、ある種の居心地の悪さを与える力をもっています。また、綾子さんの罪を罪とする直ぐな言葉に、グサリと刺されるような一幕もあることでしょう。それもまた、本書の魅力です。そのような厳しさをもっているからこそ、「孤独のとなり」の本質に出会っていくのです。


『「雑踏の中の孤独」という言葉がある。まわりにいくら人がいても孤独を癒すことはできない。私はこうした孤独の生活を何年か持った。だが幸い、遂に私はその孤独の淵から立ち上がることができた。立ち上がらせてくれたのは、私の場合、イエス・キリストの父なる神であった。自分が孤独だと思っていた時、実はすぐとなりに神がいたのである。私は只、目をかたくなにつぶって、となりにいる神の存在を知らなかっただけなのだ。』(あとがきより抜粋)


綾子さんという信仰者の軌跡を通して、私たちもまた、すでに与えられてきた、そして与えられていく道のりを、信仰によって見つめ直させてもらう、そんな軸となってくれる一冊だと思います。


私たちをとりまく様々な悩みがあります。目まぐるしい日常があります。今、立ち止まり、もう一度生きることを問い直したい、そんな思いがあるならば、ぜひ本書を手に取ってみてください。

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