乱気流を飛ぶー旧約聖書ダニエル書から
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良書紹介#111 執筆担当:小川光(卒業生会担当主事)
藤本満『乱気流を飛ぶー旧約聖書ダニエル書から』(ヨベル社、2018年)
最近、幼少期過ごした場所へ足を運ぶことをよくしています。その中で度々思わされるのが、すっかり世界は変わったということです。公園でよく遊んだ遊具は危ないからという理由で撤去され、雑木林だったはずの場所に家が立ち、好きだったあのお店は閉店している。20年というだけで、そして、身近に感じていた場所でさえも、こんなに変わってしまうのかと、驚きを隠せないことが良くあります。まるで浦島太郎のように、自分自身が「この時代の人ではないのか」と、見失いそうになることもしばしばです。しかし、「どれだけ時代が経っても、自分は自分である」、そう感じさせられたのが、今回、ご紹介する本との出会いでした。
本書はダニエル書からのメッセージ集です。著者は自身が航空機搭乗中に体験した乱気流の出来事とダニエルの体験を重ねています。体験したことのない振動、頑丈そうな機体もろとも、自分が吹き飛ばされてしまうかもしれない。そうした経験をした人物がダニエルだったと語るのです。社会に揺さぶられ、時代に翻弄され、自分自身を見失ってしまうかもしれない。変化の時代の申し子であったダニエルの状況に、現代を生きる私たちの姿を見るような気がします。
働きの中で若手卒業生と交わりをすることがよくあるのですが、時代に翻弄されているという声を聞くことも珍しくありません。円安、紛争、災害、疫病、この数年で学生時代には想像もしなかった出来事がたくさん起きています。ただでさえ自分自身のことで精一杯であるはずなのに、のしかかるような外圧に圧倒されることもあるでしょう。
しかし、我々と近しい状況が古代の時代にもあったということに大きな慰めを覚えます。そして、その状況においても、弛むことのない主の連帯がそこにあることを気づかせてくれるのが本書です。著者は波乱の時代においても、圧倒的に安定していた人格をダニエルから読み取っています。その理由が主ご自身にあり、そこにダニエルがどのように立ち続けたかを丁寧に説いてく。読者に寄り添う姿勢で、紐解かれる御言葉に何度も慰めを受けました。
著者が語るように、現代は乱気流の時代です。ダニエルが名前を失ったように、自分自身が誰なのかということが分からなくなることもあるでしょう。しかし、その中でも自分が誰であるのか。どこに立つべきかを教えてくれるのが何であるかを示す「サバイバルガイド」になってくれるのではないかと思います。乱気流を飛びながら生きる人に、ぜひご一読いただきたいです。
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